トラフグ

トラフグ

私たちが育てているほとんどの魚種はそれらの親魚の自然な産卵によって卵を得ていますが、トラフグは今でも人工授精で卵を得ています。この方法で卵を採っているのは他にクエがあります。受精した卵は水温にもよりますが、普通は5~6日で孵化します。卵は1.3mmと他の魚種に比べ大きい方で、孵化した仔魚も3.5mm近くあります。

孵化すると2日間はお腹に蓄えた親魚からの栄養分で発育しますが、その後はシオミズツボワムシというプランクトンを餌にして大きくなります。トラフグは光に対して敏感なため、特に小さい時は飼育する水槽の明るさを幾分暗くします。2週間近くシオミズツボワムシを食べて大きくなると、次は少し大き目のアルテミアというプランクトンに切り替えます。人工配合飼料は孵化して3週間目から与えます。

このようにして水槽で2ヵ月ほど飼育すると、稚魚は5cmになり、養殖用の種苗として各地へ出荷されます。私たちの販売する成魚は、この種苗を海上の生簀に移して配合飼料でさらに1~2年育てたものですが、大きさは800g~1.2kgになります。

トラフグは瞼を閉じることができる、魚では非常に珍しい特徴があります。また、怒るとお腹に空気をためて膨らませたりします。それから、カミソリのような鋭い歯でお互いに噛み合ったりするため、放っておくと尾鰭を付け根まで噛まれて全くなくなることがあります。そのため、私たちは1尾ずつ手にとって爪を切る要領でハサミやニッパで歯を切ります。ただ、歯は切っても暫くするとまた伸びてくるので、もう1、2回切ります。

また、一般に天然のトラフグにはテトロドトキシンという猛毒がありますが、人工生産しているトラフグには毒がないというデータがあります。ですが、天然のトラフグと区別できない場合があるので、現在は同じように扱われています。

私たちのトラフグは天然の海域で生簀を使用して飼育しているので寄生虫が着く場合があり、その時には駆除のために消毒剤を使用していますが、この消毒剤は魚に残留するものではありません。

卵のときから最終の出荷に至るまで、すべての期間の飼育情報を記録・保管して、消費者の方々からのお問い合わせにもすぐに対応できるよう努めています。